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こだわりの力

強迫的であることをには,ネガティブな側面とポジティブな側面とがあります。

拘る・執着する・しつこい・粘着質・視野が狭い・ワンパターン・木を見て森を見ず・自己中・頑固・はまる..

正確・人道的・丁寧・完璧主義・正直・粘り強い・職人的・集中力あり・持続力あり・倫理観強し・根性あり・究める・ぶれない...

強迫性障害(服薬中)/強迫性障害(薬なし)/不潔恐怖症/完璧主義/潔癖症/きれい好き

 

 どこから病気と言えるのでしょう。病気でなかったら性格と言える範囲はどこでしょう。一般的には周囲の人に金銭的人的迷惑をかけなかったらどんなに強迫的であっても病気とは言い難い傾向にあります。侍従を雇用することができて,強迫行為のすべてを肩代わりしたら,雇用契約であって強迫の巻き込みとは言えないと主張するかもしれません。しかし,本来は身体能力的,知的能力的に可能なはずの行動を回避して自立していないのは病気の範疇だと言えます。

 ところが,こだわりの力というものは職人芸やスポーツ選手や芸術家などトレーニングを必要とする分野ではその才能を発揮できる場合がよくあります。正確性や緻密性を要求される職人さんや飽きずに筋トレに励むアスリートさんや集中力を半端なく保って勉強ができる中高校生など,ほんの少しのミスや注意がそれることも許せなくなって症状が悪化します。本来は,正確で,集中力が高く,完璧主義な人たちですが,ちょっとしたつまずきによって強迫儀式を作ってしまい,それが長期になると一人では修正できなくなっていきます。こだわりの力は様々なところで発揮されていきます。社会的に認められる形でこだわりを使って行けるよう,支援していきたいと思っています。

 最後にこだわりをもって素晴らしい作品を作っている芸術家さんをリンクしておきます。特に草間さんやクレーマーさんはOCDであることを公表している画家です。OCDの脳と普通の脳は境目がありませんが繰り出される行動に違いがあって素晴らしいのです。クリエイティブである脳からは,アイデアが豊富に湧き出てきます。芸術や未来の現実的な設計にクリエイティブな脳を使うと素晴らしい作品が生まれてきます。私は,将棋名人・羽生さんの本を強迫の方々のバイブルと呼んでお勧めしていますが,羽生名人の百手以上先を読みながらのこの一手の選択は,脳のリソースをフル稼働している作業でしょう。アイデアを現実場面で使ってこそ,クリエイティブ脳が活きるのだと思います。一方,病気と言われる方々は不安なアイデアばかりを選択的に使ってしまいがち,あるいは使わずに考えてばかりいるという違いがあります。(2018.8.20更新)

◆気持ちよさを追求する人には…

 こだわりは恐怖や不安を避けるだけではなく,気持ちよさの追求もあります。パチンコに行ってたくさん球が出る瞬間の快感はちょっと病みつきになると言います。

 気持ち良さの刺激はどんどん求めれば求めるほど強い刺激でないと反応しなくなります。こだわりが強いとこの傾向が増します。完璧な作品を仕上げたいという思いもこのこだわりの現れです。しかし,それなくしてよい芸術作品が生まれないとしたら,こだわることはとても大事な才能です。しかし,こだわり過ぎてなかなか作品にならないとすれば,そこは,もっと完璧さが欲しいなあという感覚のまま,足りない感覚でいられるよう支援します。

◆気になることを追求する人には…

 気になることにすぐに気持ちがそれてしまうこと,これはしばしば注意欠如と診断された人にも起こってきますが,強迫的にこだわる人の中にも見られる様子です。この場合は,気になることに一旦焦点化されると,ついそこから注目を離せなくなってしまうことによって起こります。

 あやふやな答えでは気がすまず,明快な答えや完璧なすっきり感覚を求めたりしてしまいます。

 たとえば,気になることの答えがはっきりするまで,相手に回答を追求したりします。自分の体に納得いく感覚を追求したりしてしまいます。むしったり触ったり押したりして確認することもあります。気になることを気になったまま放置できるように支援します。

◆求めることと避けること

 求めることには,飽和することがありますが,避けることにはこれでヨシという感覚がありません。それは回避には不安がつきもので,これでヨシという100%の安心がないからです。

 求めることにも底なし沼のような飽くなき追求をする人たちには飽和することは考えられないかもしれませんが,どこかで物足りなさという感覚に対する不快感を自ら増やして変えて行こうとすることが治療になります。

 とはいえ,私はこだわりのある方々が大好きですから,そのこだわりと上手に付き合っていって欲しいと願うばかりです。

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